『アナザー・プラネット』 もともと映画と言えば、SF映画をよく観ていたのだが、今年に限っては、SF映画はかなり控えめだ。おそらく10本も観ていない。SF映画には大きく二つの種類があって、ひとつは、よくテレビで話題になる、宇宙とか未来を舞台にした、割と派手な映画だ。製作予算何十億とか、そんな謳い文句がついていることが多い。もうひとつは、その逆で、低予算でつくられた、いわゆる《B級SF映画》と呼ばれるもの。気味の悪いモンスターが出てきて人々を襲う……もはや説明する必要もないだろう。ところが、そんなSF映画も、最近はかなり変化してきたなと感じる作品に出会った。『アナザー・プラネット』ANOTHER EARTH アメリカ 2011年制作監督 マイク・ケイヒル主演 ブリット・マーリング評価 ★★★★☆ SFというより、ヒューマンドラマと言ってもいいほど、ヒューマン色が強いのが、この作品が他と違うところ。突如、“もうひとつの地球”が現れ、選ばれた人だけが、そのパラレルワールドに行くことができる。人々はその世界には、もうひとりの自分たちが存在することを知る。主人公ローダは、“もうひとつの地球”行きのチケットを手にする。しかし、彼女は過去に、とりかえしのつかない大きな罪を犯していた。最終的に彼女は、どういう選択をするのか?ここが、この映画のポイント。観客にも考える時間を与えるかのように、物語はゆっくりと進んでいく。ラストシーンは、衝撃的である。観る人によって様々な解釈ができる。ちなみに、自分の解釈としては、“もうひとつの地球”から来たローダは大学を卒業して、順風満帆な人生を送っているはずだ。こちら側のローダの状況を知った彼女は、正反対の人生を送っている自分を見てショックを受けたことだろう。哀れだと思ったか、励まそうと思ったのか。逆に考えれば、こちら側のローダにとって、正反対の自分は《希望》に他ならない。罪を犯さなければ、本来進むべき人生を送る自分が、目の前にいる。ローダの思いが報われたようなシーンでもある。これとよく似た映画で、『ザ・ドア/交差する世界』という作品があるが、観て比べてみると面白い。by spacecowboy PR